備忘録のようなもの

思うことのあれこれを記録しておくところ

『関西俳句なう』を読む ④塩見恵介

 塩見先生とは、俳句ラボのガイダンスでお会いしたのが最初。以降俳句ラボではコーディネーターというポジションで参加されており、今期、後半(2、3月)を担当されるということで。普段、子ども(児童や生徒)と接する機会がある塩見先生は、文字通り「先生」で、お話しした感じも、まさに「先生」でした。

 誤解があってはいけないので書き加えますが、塩見先生は初対面でも気さくに話してくださる方なので! ってなんだか急に言い訳臭いですけど、飽くまでわたしの印象なので悪しからずご容赦くださいませ。

 余談が長くなりました。では、最後も好き勝手に書きたいと思います。

 毎度しつこいですが、作者さんからのクレームは甘んじて受け入れます(陳謝)

 

 

「ときどきバナナ」 塩見恵介

窓側の黒板光る春の空

 カーテン閉めてよ、っていうやつがいる。黒板が光って読めないよ先生、ってまたべつのやつ。先生がカーテンに手を掛ける。わたしは空にかわいい雲を見つけるけれど、すぐにカーテンで見えなくなってしまった。教室に影ができる。さっきまで光っていた黒板はもうない。はやくチャイム、鳴らないかな。

頭から飛び込むプールほどの拒否

 水に顔つけられへんねん、と弱々しく言っていた同級生を思い出した。そんなだから、飛び込みなんてもってのほかだった。気持ちはわかる。わたしも苦手だし。でも、そんな拒否のしかたじゃ、誰もわかんないよ。もっと声張れ! いやだって言え! 叫べ! 絶対いやだって、言え!

ペナルティエリアに倒れているパセリ

 なんでやねん。なんでパセリやねん。ゴールキーパーも二度見して、全然集中できへんやん。一回見つけたばっかりに、頭の中で、なんでパセリあんねん! って思うやん。もしや、敵の戦略か? それとも身内に失態か? 誰やねん、ピッチで弁当食ったやつ! もはやサッカーどころではない。ゴール決まってもしょうがないやん。パセリ倒れてるもん。

ストロベリーパフェと唇までの距離

 パセリでツッコミすぎたので、少しくらい鑑賞っぽいこと言わんと。音感は、ふたつ前に書いた「頭から~」の句と似てる。後半の「唇までの距離」と「プールほどの拒否」の部分。だからなんだって話をすると、だから軽妙。パフェと唇って食べるんだから当たり前だけど、わざわざ「唇までの距離」って言うんだもんな。ここが好きなんだけど、ここを敢えて身も蓋もない感じに言うと、めっちゃ見てるやん!

撃つならば撃てとTシャツ干されたる

 かっこいい。かっこいいんだけど、Tシャツなんですよね。これが白シャツだったら、違う。Tシャツだからいいんだけど、ギリギリ、ちょっとダサい。このダサい感じが、やけくそでいい。乾かすために干してるのに、クソガキに水鉄砲の的にされたりさ。友だちに柄が変とか笑われてさ。どうなったっていいんだ。撃たれたって。でも、きっとこのTシャツお気に入りなんだろうな。

レモンティー髪切ったかと聞くべきか

 髪切ったかを訊くんじゃなくて、今の髪型がどうかを言った方がいいんじゃないの、と思うんですよね。これは常々思うんだけど、髪切った? ってそれ、タモリさんしか使えないでしょ。切ったって気付いたんだったら、似合ってるかどうかまで言えよ、と。むしろそのことを言うための、髪切った? じゃないのか、と。言われたほうは、多かれ少なかれ期待しちゃうんじゃないですかね。似合ってるね、って言ったら、髪切ったのよ、って返ってくるかもしれないし。って、なんの話だって感じですけど、レモンティー飲みながら、褒め言葉探したほうがいいよって話です(きっぱり)

(一同笑)で終わる座談や菊の昼

 アイドル雑誌を捲ってると、たまに日本家屋を借りて撮影、なんてことがある。いろんなシチュエーションが求められるアイドルって大変だな、と思うのと同時に、イケメンの和装って最高だな、と思う。「(一同笑)」は、そんな大変な中でも仲のいい和気あいあいとした感じがあっていい。って、これ絶対このシチュエーションじゃないんですよ。わかってるんですけど、あえてアイドルオタク視点で共感しました、という話でした。

雪晴れにコアラの尻尾ほどの用

 コアラって尻尾あったっけ、と問えば、投げやりに、あるよ、との返事。どんな、と再び問えば、もこっとしたやつ、と適当な返事。で、用件なんなの、と逆質問。まあ、大したことじゃないんだけど、と言い淀む。「雪晴れ」の清々しさと、「コアラの尻尾」という曖昧な感じ。わかるような、わからないような。すっきりしてるんだか、してないんだか。そこにちょっとした愛嬌を感じるのがいい。

一つだけ陽だまりにゆく毛糸玉

 ころころころころ……窓辺の陽だまりに向かって転がっていく毛糸玉。かわいい。「一つだけ」なのがいい。他の毛糸玉は寒くても我慢して、これからマフラーかセーターかになろうとしてるっていうのに、ひとつだけは、どうしても寒くて転がってっちゃった。きっと偶然転がっていっただけだろうけれど、まるでそこに意思があるように見えたのか、意思を見出したのか。すてきな感覚。

YES WE CAN まずセーターを脱いでみる

 寒い日のお風呂って、入るまでが地獄。最近は洗面台にヒーターがついている家もあるらしい。贅沢すぎやろ。水回りにヒーターって、なんか怖い。だから我が家も過酷なサバイバルを強いられる。たかが脱衣所で服を脱ぐだけなのに。「YES WE CAN」今となっては懐かしいフレーズだけど、心情にぴったり。できる、脱げる、いける! で、一枚セーターを脱いで、さっむ~~! 騒いでるうちにさっさと脱げばいいんだけど。

 塩見先生の句は、軽妙。ユーモアと言って怒られないかドキドキするところですが、「きれい」「うつくしい」ではなくて「おもしろい」「軽快」という感じ。わたしの句について、塩見先生から良くも悪くもあれこれとご指摘いただいたときに、塩見先生の着眼点そのものがおもしろいと感じたのを覚えています。あ、そこにツッコミ入るんだ、っていう。言われてみれば、と思うようなことばかりなので、自分がいかに考えていないか露呈する瞬間でもあるんですが。

 タイトルの「ときどきバナナ」に「!?」となって、50句読んでいる間に確かにバナナが出てきて、なるほど、とは思ったんですけど、バナナの句をひとつも書いていないことに今頃気づきました。すみません。バナナ、アレルギーで食べられないんで、なんとなく避けちゃうんですよね(なんて理不尽な)

 最後の最後までゆるっとした感じになってしましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。いつもお世話になっている先生方への感謝祭ということでしたが、これからもよろしくお願いします、という気持ちを添えて終わりたいと思います。

 好きな句の話するのって、楽しいな~!