備忘録のようなもの

思うことのあれこれを記録しておくところ

『関西俳句なう』を読む ②久留島元

 お世話になっている先生への感謝の気持ちを込めて、という大事な一文を書き忘れる程度にうっかり者のわたしですが、続きまして、久留島先生のページを。

 掲載順なので、その次は杉田先生、最後が塩見先生のページですね。

 引き続き、好きな句を10句、それぞれにつらつらと好き勝手感想のようなもの(どんどん曖昧になっていく表現)を書いていきたいと思います。

 作者さんからのクレームは甘んじて受け入れる所存です(陳謝)(二度目)

 

 

「妖怪の国」 久留島元

雪喰っても喰っても雪ン子にはなれぬ

 なれないかぁ。でも、なりたかったんだよね。雪ン子に。雪ン子って雪女の子どもなんだって。雪喰っただけじゃなれないな。残念。もしかして、あの子かわいいなって思ってたら雪ン子だったのかな。せつない。それとも、かわいい雪ン子になって、かわいいって言われたかったのかな。どっちにしたってせつない。だって、なれないんだもん。

校正はココアのあとでいいですか

 だめです。今すぐやってください。どうせ猫舌なんでしょう? ちょっと冷めたくらいでいいじゃないですか。アツアツが飲みたい? 飲めないのになに言ってるんですか。締切はもう間際なんですよ! って、わたしなら言う。絶対に、言う。余裕がある人は、こんな確認しない。「ココアのあとで」ってなんでちょっとかわいいんだ。疲れてるから糖分が必要? なるほどな……って、なるか! 早く校正して!

龍天に昇り枕投げてよこす

 扱いが雑なんだよなぁ……なんか嘗められてる気がするんだよなぁ……ってぶつくさ言いつつ、転がった枕に手を伸ばす。ほらよ、って投げた方は、べつに嘗めてるわけでも、雑に扱ってるわけでもない。きっとね、仲がいいだけなんだと思う。春ですねぇ。ええ、春ですよ。

念力も届かぬ滑子汁のなか

 ゴム製品は電流を通さないと聞くから、滑子汁は念力を通さない画期的なものなのかもしれない。ぐぬぬぬ、となにか念じてみても、滑子のぬらぬらした感じには全然勝てそうもない。こんなことってある? 滑子に敗北感を抱くことって、ある? でも、考えてみたら、本当に勝てる気がしない。なんで!?

太郎冠者ばかりで秋がまだ来ない

 おーい、オーディションで次郎冠者と三郎冠者決めたんちゃうんかーい。なんで太郎冠者しかおらんねんどうなってんねん、幕が上がらんやないかい。そりゃ秋も来んわ。来たら困るもん。それともなにか、あれですか、どいつもこいつも太郎冠者みたいなまぬけばかりや、とそういうことですか? どっちにしたっててんてこまいには違いない。夏が終わらないんじゃない! 誰かのせいで、「秋がまだ来ない」んだ!(突然の踊る大走査線)

冬銀河何か生まれてきたような

 銀河の河と何かの何が連続していて目が回った。可ってなんだか目が回る。だからなにか生まれたのかもしれない。冬銀河じゃなくても、銀河っていつことなくなにか生まれている気がする。でも「生まれてきたような」なんだよな。それに「何か」なんだよな。全然わかんないんだよな。わかんないんだけどそんな気がする。謎の説得力。くやしい。わかんないのに言い負かされた気がする。

生年と同じ十円玉小春

 あ、この十円玉同い年や。って、なんで思っちゃうんだろう。なんでうれしくなっちゃうんだろう。それこそ、小春くらいの喜び。おお、なるほど、これが俗に言う、季語が効いているというやつじゃないか。ようやく俳句の鑑賞らしいことを言いだした気がする。遅い。百円じゃダメなんだよなぁ……百円ってそんなにじろじろ見ないんだよなぁ。十円玉はたまに見ちゃうんだよなぁ……財布の中に溜まりがちで、何枚あるんだよ財布が閉まんないよって、見ちゃうんだよな~~

階段で蟬ふんじゃったって言う子供

 わたし絶対眉顰めてる。踏んだとき、絶対ジジッて言ったじゃん。ちょっと動いて靴の裏にその感触あったでしょ。なんでそんな無邪気に言えるのよ。息の根止めたよ! って、時間の問題だっただろうけどさ。「ふんじゃった」って、あまりにも残酷。夏の終わりって、ほんと残酷。

隙あらば晩夏の入りこむ日暮

 お帰りくださーい! 涼みたいんでお帰りくださーい! なんで入ってくるのよ。なんでなのよ。「隙あらば」ってなんなの、図々しいな。でもね、その心意気、嫌いじゃない。むしろ好き。好きな句挙げてるんだから好きに決まってるんだけど。

朝顔に目薬差してさしあげる

 やめてさしあげて! なにしてんの!? 朝顔もびっくりするでしょう。でも、このいたずら、やったからってすぐに朝顔が枯れるわけでもないんだな。やり続けたらわかんないけど。しかも「さしあげる」んだもの。恭しくね、敬意を持って。敬意はわかるけど、経緯がわかんないな。ほんと、なにしてるんだろうこの人。

 久留島先生の句を読んでいると、どうにもこうにもツッコミが止まらない。だからと言って突拍子もないのか、意味不明なのか、というとそうでもない。シュールって感じ。久留島先生がシュールなところも、無きにしもあらず。時々、「今、ボケました(ドヤ)」みたいなのが透けてるのも久留島先生の愛嬌というか、お人柄という感じ。って言うと嘗めてるみたいでアレなんですけど、そうじゃなくて、そういう「狙ってできる」というところ、実はすごく尊敬してます。

 俳句ラボでも、よく「構造」の話をされるし、とても俳句に真摯という印象。そりゃあ誰だってそうなんですけど、講師の先生それぞれ大事にされていることがあるとしたら、わたしが受ける久留島先生の印象は「構造・構成」。亜未先生は「感性・感覚」の印象だったので、同世代でも、同じ結社でも、やっぱり視点は違うんだな、と。

 実は来月の俳句ラボ、すでに欠席を申し出ており。袋回しだったようなので、回避できてラッキーと言うべきか、脳を鍛えるチャンスを一回失ったと言うべきか。

 すいません、どうしても性癖で殴りに行かねばならないので! in インテックス

 なんのこっちゃですね。この辺で終わっておきます。次は杉田先生~~!