備忘録のようなもの

思うことのあれこれを記録しておくところ

『関西俳句なう』を読む ①藤田亜未

 なにを今更、と思われるでしょう。わたしもそう思います。

 ただ、伊丹俳句ラボでお世話になっている先生のページくらいは、お気に入りを探して、感想を書いてもええじゃないか~、と思いまして。半分以上開き直りですけども。

 とは言え、作者の先生方には「ほんとにえぬさんったら……」と溜息を吐かれることは間違いないので、今のうちに謝っておきます。稚拙ですみません。

 好きな句を10句、それについて好き勝手に書いていきます。本当に、好き勝手なので作者さんからのクレームは甘んじて受け入れます(陳謝)

 

 

「春雷」 藤田亜未

引き続きれんげ畑の中の夢

 れんげ畑って、最近見ない。どこに行ったら見られるんだろう。見つけたら、ああ、あのときに見た夢の続きに違いない、って思ってしまいそう。れんげ畑の夢は見たことがないけれど、小さい頃に見たような気がするれんげ畑は覚えている。それが本当にあったのか、夢だったのか、もうわからない。きっと、そう感じてる人って他にもいる。だから、あの記憶の「引き続き」なんだろう。れんげ畑、どこにあるんだろう。

ためらいもなく白桃の瑞々し

 白桃は瑞々しいものなんだけど、「ためらいもなく」そうなのか、わたしは知らない。白桃を食べようとして包丁を入れたら、あまりにも瑞々しくて、その潔さが「ためらいもなく」感じた、と読むのが素直? わたしはひねくれてるから、白桃め、こんちくしょう、現実を突きつけてくるんじゃないよ! って思う。だって、まるで包丁を入れたわたしがためらったみたいじゃない。まあ、ちょっと、上の空だったかもしれないけどさ。

ギターの音秋のうねりの中にいる

 「秋のうねり」ってなんだろう、って一瞬考えた。でも、ピンと来なかった。なんとなく、稲が風でぶわあっとなってる感じを想像した。そのぶわあってなってるところに「あ、ギターの音が聞こえる。誰が弾いてるんやろ? どこから聞こえるんやろ?」って。今、ちょうど「どうぶつの森」で遊んでいるから、なんとなく、とたけけがいるのかと思った。って、そんなわけあるかい。

わたくしを脱ぎ捨てられぬ月の夜

 月夜って、むしろ変身できるんじゃなかったっけ。それは狼男だけか。この人は、脱ぎ捨てなきゃいけない状況に追い込まれてたのかもしれない。変わりたいわけじゃない、でも、変わらなきゃいけない気がしてる。ただ、「脱ぎ捨てられぬ」。もどかしい。わかる。「わたくし」が、いかなるものかはわからないけれど、お互い、頑張ろうねって思う。無理に脱いで捨てちゃわなくても、着たくなったら着たっていいんじゃないかな。

おしくら饅頭取るに足らないことばかり

 おしくらまんじゅうが取るに足らないと思……って、怒られるか。だって、ねぇ、意味は、ないでしょう。温まるため? 仲良しの遊び? なにそれ、つまんない。でも、世の中、存外つまんない。つまんないと思えば、途端につまんなくなるんだって、大人になっていく間に学んだ。だから、おしくら饅頭も、それ以外のことも、本当は楽しかったのかもしれない。今ならできそうな気がする。取るに足らないなんて思わないで、おしくら饅頭も、なんでも。

オリオン座夜の隅々まで蒼く

 端から端までって言っても、結局自分の見えてる範囲だけの話で、広すぎる宇宙の一部にしかすぎない。でも、少なくとも、自分の世界一面が蒼い。それでいいじゃん、って思う。自分が見てる景色がきれいで、いいじゃん。最高じゃん。宇宙は広いとか、いらないよ、うるさいよ。オリオン座がきれいなんだよ、黙って見ようよ。

もうちっと面をあげい冬の月

 「冬の月」に言ってるのかと思ったけど、月ってべつに凹んだり落ち込んだりしてない。俯くのはいつもこっち側。じゃあ、誰かに言われたのかな。言われて顔を上げたら、月がバーン。くっそー、あいつ堂々としやがってー! こちとらいろいろあるんじゃーい! って、月に八つ当たりしてどうすんだ。でも、俯くことは辞められたから、いいのか。「もうちっと」っていうか、かなり上がったけど。「面をあげい」の勢いのおかげだな。

心なら眠れる花の下にいる

 どこよ。「眠れる花」なのかと思ってそう言っちゃったけど、「心なら眠れる」なのかな、いや、やっぱ「心なら/眠れる花~」か。なんだなんだ? 不穏だな? 死んでるの? 生きてるよね? ってドキドキした。ドキドキして、気になった。不穏なのに、きれいな言葉が並んでいるから霞がかった世界を覗いているようで不思議な気分。

濁音はレタスをちぎるような音

 パリッじゃない。シャキッでもない。バリバリバリ! ガサガサガサ! レタスは案外うるさい。思わず笑ってしまった。言われてみればそんな気もする……し、そうでもないんじゃないかな~? と首を傾げたくなる気もする。そんなこと考えたことなかったわぁ、って。小気味いい、新鮮な気づき。レタスだけに(一言余計やわ)

追伸に筍飯の炊けたこと

 筍飯がおいしく炊けました。末尾にそう書いて、送る相手は誰なんだろう。実家に帰っておいで、っていうアレかな。筍飯好きやったやろ? っていう。そこまで言わせたらあかんのちゃうん、はよ帰りや。って、わたしがその手紙をもらった人を知っていたら、言ってる。今帰れ、すぐ帰れ。んで筍飯をSNSにアップしてついでにいいねももらえ。一石二鳥や。SNS映え? 知らんわい! ハッシュタグは「#実家飯最高」じゃい!

 亜未先生って、年下のわたしが言うのは失礼かもしれないけど、とってもかわいい人って印象。実際かわいいし、かわいいものも好きだし、ケーキをおいしそうに食べるのもかわいいと思う。でも、だからってふわふわしてる感じではなくて、結構リアリスト。そのギャップが、50句にちりばめられている感じ。

 「おしくら饅頭」の句みたいな冷静で、ちょっと毒気のある感覚もあるし、10句に挙げてないけれど、「メレンゲのさくっとふわっと冬の月」みたいな、かわいらしいところもある。全体的に落ち着いている感じは、亜未先生の人柄的だな、ってこういうの鑑賞とは関係ないんだっけ。ま、いっか。

 いや、よくないわ。初回からこんな調子で大丈夫かな。亜未先生なら笑って許してくださるはず、という甘えを全面に出しつつこの辺で。

 次は久留島先生だ~~!